もっと乗っていたいと思いつつ、博物館の前で降りた。しかし、博物館は三時に開館で、まだ三十分ほど時間があった。その時間をつぶすために、私たちは喫茶店に入った。
パウロさん一人、どこかにいっている間、山内さんと飯島先生と私は小さな喫茶店の入口付近のテーブルに腰掛けていた。軽便タクシーに乗り込んだときから、インドの少年が私たちの後について来ていた。私に親しげに言葉をかける。それも日本語である。「こんにちわ」という。日本語が理解できるようである。私が「日本語が分かるとはすばらしい」というと、山内さんが、その少年を斜めににらみつけて「彼らは、テイのいい乞食で、こちらが気を許すと、やれ父親が病気で寝ているとか、母親が働けないとかと言ってきて、最後にはお金をくれだ。一度お金を与えると何度でもせびりにくる」と。
日本語で話すと、その少年には山内さんが何を言っているのか分かったようで、すぐに姿を消してしまった。何を注文しようかなと考えていたら、山内さんがマンゴー・ジュースを注文してくださった。ビンはほこりで黒ずんでいて、のみ口付近は特に垢のようなものがこびりついている。少々の汚れは気にしないのがインド流である。私は敢えてティシュで拭きもせずに、そのまま口をつけて一口飲むと、何とも言えない濃厚な本物の味である。初めて味わった。「これ、うまいね」と思わず口にだすと、山内さんが「でしょう?」と、私の目を見てうなずいた。日本では決して味わえない、まじりっけなしの自然な味である。しかも値段は十ルピーほどである。私がミネラル・ウォータを注文しようとすると、山内さんが、ボトル一本とコップを三つもってくるように主人に言った。そして、そのステンレス製のコップの表面を、ティシュを取り出して、丁寧にぬぐっている。拭いながら、インドに来て、下痢を訴えるのは、日本人だけで、その中でも、日本で水道水を飲んでいる人たちだという。こんなに体が弱くなったのは日本の水道局のせいである、という説を唱えられた。昔のままの井戸水を飲んでいる人たちはインドに来ても下痢を患うことはない。腸内には、善玉菌がいて、少々の大腸菌が体内に入っても、平気である。ところが日本の水道水は塩素で殺菌されて善玉の大腸菌まで殺しているから、それを飲んでいる人たちの腸内は無菌状態になっていて、インドに来てわずかな大腸菌にふれて下痢を起こすというわけである。インドの人たちは、同じ水を使って何度も食器を洗っている。だから、その食器に付着している水滴の中には大腸菌がうようよいるのだというわけで、ティシュできれいに拭き取っているのだった。私は塩素で殺菌した水道水は飲まずに、○○山の麓の湧水を汲んできて、それを飲み水にしているので、少々の大腸菌は平気である。
短時間で、塩素で殺菌して浄水する方式ではなく、時間をかけて沈澱させて自然の上水に戻す方式の浄水の方法もある。ヨーロッパで使われている、この方法は大腸菌が完全に死滅しないが、人間の体にはよいそうである。早く、この方式に変えてもらいたいものである。
四日目のこと(4)
2010年08月24日 · コメント(4) · 未分類
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