銀杏を煎って食べた時。
学生時代を思い出しました。
私は学生寮で生活していました。
寮の庭には銀杏の大木があり、
秋の終わりごろには、
黄色いイチョウの葉とともに、
大量の銀杏の実が落ちました。
銀杏の実が熟れて、
果肉が腐敗すると悪臭がします。
腐敗する前に実を拾って、
土に埋めておくと、
殻つきの種だけが収穫できます。
それを乾かしストーブの上で煎って、
寒い夜を過ごしたことを思い出します。
沢山収穫したので、
菓子の箱に銀杏の実を詰めて、
家に送り返しました。
私が帰省した時、
隣に住むおばさんが私に母のことを話してくれました。
母は病気がちになり、
床にふせっていましたが、
私が送った銀杏の実を空き地に埋めて、
芽が出ると、毎朝その芽を見に起きてきました。
銀杏の新芽が成長して、
高さが10センチぐらいにまで伸びた頃、
その銀杏の木を母は、
児童公園の隅に植え替えました。
それからも銀杏の木の成長を見守るために、
時々家を出て、公園の隅まで出かけました。
銀杏の木が20センチぐらいになった頃、
ある朝、公園の隅の空き地まで来てみると、
銀杏の木はなくなっていました。
きっと、通行人の誰かが、
銀杏の木が十分な大きさとなる頃を見計らって、
持ち帰ってしまったようです。
銀杏の木の成長を楽しみにしていたのに、
「お母さんは気の毒でした」、と。
母よ、私は天国へ銀杏の実を持って行きます。
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