毎日、短い睡眠時間で過ごしてきたから、睡眠不足が蓄積されて、その日はこれまでになく、眠くてしかたがなかった。じっと座っている間にも、いつの間にか、こっくりこっくりと首をうなだれていた。例のごとく、白装束の十五、六人の男性たちの集団がサイガヤトリを高らかに朗唱しながら、中央の通路を行進していく。マンディールの中では、女性たちがスプラバータムのバジャンを歌っている。やがて、鐘がうちならされ、それを合図にして、全員がオームを唱える。もうすぐだ。私の胸が期待感で膨らむ。オームの響きの余韻がおさまって、しばしの静寂が支配する。すると、スピーカーから物憂げな、ヴィーナとタンブラーによる演奏の音楽が流される。それはサイババが姿を現す合図である。ジット目を凝らして、サイババの家の方の通路を見ると、二センチほどの小さな、鮮やかなカーキ色のローブが、ゆっくりと動いている。いよいよ近づいてくるのだな。眠気は一気に消え去り、私はインダビュー・ルームに呼ばれたときを想像して、英語でどんな受け答えをしようかと、考えて英文を頭の中で組み立てていた。
ところが、である。例のごとく、サイババは、全く男性陣の方には近づいてこなかった。女性陣の方に近づいて、引き返して、そのままインタビュールームに入ってしまった。すると、一人の中年の男性と、その息子さんらしい少年が立ち上がって、二人がインタビュールームへ向かっていった。恐らく、その少年はサイババの学校に入学を希望していて、今からサイババの面接を受けるのであろう。音楽がなり止んだ。今朝のダルシャンはこれでお終いである。私は他の人々をさしおいて自分だけインタビューを受けようとする卑しい心をみすかされたのだと感じた。恥ずかしい気持ちに襲われた。立ち上がって、出口に向かう途中、やや落胆した面もちのパウロさんに出くわした。彼は自分が「十五日までです」と答えたために、今日のイタビューがなかったのだと、どこかで思ったかもしれない。「あの外国の人のインタビューが終わった後、スワミは出てくるから、日本人グループは残って、スワミがルームから出てきたとき、全員で手を振って、スワミに訴えよう」と提案した。私たちは出口から引き返して、ホール中央の演壇のすぐ近くに陣取って、サイババが部屋から出てくるのを待つことにした。
最後のダルシャン(2)
2010年09月04日 · コメント(0) · 未分類
タグ :
コメント (0)
コメントはまだありません。