私はその頃、精神状態が不安定となっていて、朝方三時頃になると、言うにいわれない不安感から目がさめてしまって、眠れない日々が続いていた。頭がすっぽりと不安の雲か霞のような、目には見えないけれど、エネルギーの固まりのようなものに覆われる感じであった。
ある日のこと、朝、私が仕事にでかけようと玄関の引き戸をあけると、息子かかけつけてきて、私を引き止め、引き戸を閉めてしまった。私は息子を押し退けて表に出ようとすると、息子は私の顔に拳骨をくらわし、「仕事に行かせん」と言って、取っ組み合いの喧嘩になった。私は玄関からやっと出て、自転車を出しにいこうとすると、後ろから息子につかまり、力一杯引き倒された。私は起き上がって、息子に足払いをかけ、息子が倒れているすきに自転車にのって、会社に出かけた。息子の拳骨があたった左目の所が、ひりひりしていた。会社の社長は、私の顔を見て、ちょっと驚いた顔をしたが、何も聞かなかった。私はそのまま仕事に出かけた。
会社から家にもどって見ると、玄関に鍵がかけられていて、私は家に入ることができない。仕方なしに、自転車に再び乗って、○○丘の家内と娘が避難しているアパートに行った。アパートに入ろうとすると、ドアの向こう側で、家内が、娘が私を拒んでいるという。娘は、受験勉強の真最中で、私に邪魔されたくないと言っているという。事情を話して、その日だけはアパートに寝させてもらうことにして、後日別のアパートをかりて、私だけそちらに移ることにした。
家内と一緒に息子の様子を見に行った。玄関には内側から鍵がかけられていた。南側にまわって中を伺うと、八畳間と西側の四畳半の部屋を隔てている襖の唐紙が無残に破られている。高級家具の茶箪笥は目茶苦茶に壊されていた。家の中はゴチャゴチャになっていた。息子は通常の精神状態ではない。私は息子が悪霊に憑依されているのではないかと考えた。とても私たちの手に負えそうにもない。東京の〇〇さんを通して、女史に連絡して、BC氏の覚者に、息子に憑依している悪霊をとりはらって貰おうとした。すぐに連絡した。その返事がきた。BC氏が英文で書かれた直筆のファクスであった。そのファックスはしばらくとってあったが、今はどこかへやってしまった。それによると、息子は悪霊の憑依ではなく、原因は私たち夫婦の仲にあるという返事だった。私はそれを読んで愕然とした。私は、根本原因は、家内が、私が家族への無関心を示した腹いせに、息子に異常なほど執愛を抱き、息子の要求通りにしてきた甘やかしであると考えていたので、それを読んだとき、息子の状態に対処するために、私自身の考え方の大変換を迫られていることを知った。息子は元の精神状態に戻るだろうか。たぶん、無理だろう。私はほとんど絶望していた。
閉じ籠りに寄せて:息子よ(12)
2019年08月12日 · コメント(0) · 日記
タグ : 憑依
コメント (0)
コメントはまだありません。