秘教日記

私が小学五年生のとき、友人のお父さんはアメリカ旅行に出かけ、お土産としてご自分で撮影されたビデオの映像を私たちのクラスで上映してくださった。友人のお父様は陶磁器会社の社長さんで、友人の持ちものを私はいつも羨ましい気持ちで見ていた。ビデオに映されていた映像を今はほとんど覚えていませんが、友人がビデオを見ている私たちに、アメリカの道路は舗装が行き届いている、人々は普通に革靴を履いている、（私の家は戦後の貨幣価値切り下げの改革で、事業が衰退し家運は斜陽真っただ中、私は藁草履を上履きに使っていた）日本の道路は舗装されておらず、車が通過した後砂埃が舞い、私たちは顔をそむけて砂埃を避けていたことを覚えている。
友人の父親が撮影してきたビデオの映像を見ながら、“アメリカは進んでいるなー、なんて豊かな国なんだ！”と思ったことを覚えている。
ところが、最近のTVの報道番組で、コロナウィルスに感染しても、貧しさ故か、医療を受けられず、死亡した路上生活者たちが市のトラックで運ばれる映像がTVに映されるのを見て、考えこんでしまった。
６０年前の日本の姿を見るようでした。60年経つと逆転する。豊かだった国は貧困となり、貧しく惨めだった国が豊かさを享受している。
私は平家物語の平清盛の人生を思い浮かべた。そして物語を貫いている仏教思想“盛者必衰の理”を思い出した。